
ハプスグルゲ家の出身地オーストリアにちなんで呼ばれるようになったマドリッド旧市街地。そのハプスブルゲ家というのは、調べていくうちに気分が 悪くなるほど非人間的なことをやった王家だ。南ドイツ、スイスに端を発するこの王家は13世紀あたりから血縁制度を利用した政略結婚で急速に領土拡張を図 る。戦争は他家に任せておけ、汝は結婚だけを考えよ。という家訓の王家なのだ。領土問題というのは確かに国民感情に訴えやすい。古代より戦争の原因になっ たし、血で血を争ってきた。血を流さずに領土拡張を成しえたのはアメリカがロシアから金でアラスカを買ったというめずらしいケースを除くと、おそらくこの ハプスブルゲ家ぐらいだろう。外交(婚姻)で領土拡張をするのだから凄い。血を重んじる純血主義というと聞こえはいいが、その内容たるやすさまじい。いと こ同士の婚姻は当たり前、実の姪との婚姻もしばしば、しかし単に実の姪というのではなく、その前の代々の親も同じような血族結婚なのだ。したがって血は幾 重にも濃いいわけだ。これじゃまるで畜生道だ。当然ながらひ弱な子、精神異常の子が続出した。そうやって出たのがスペイン、ハプスブルゲ家の最後の王カル ロス二世だ。まともに歩くことも出来なかったという。始終よだれを垂らしたこの王は、王家にとってもっとも大事な生殖能力も欠けていた。彼は、その生涯に 一つだけ良いことをした。それは1700年という非常に覚えやすい年に亡くなったことだという。
Archive for April, 2009
カバ、バハ(cava baja)通り、ハプスブルゲ家のマドリッド市街地でも、最も時代を感じ取れる通りではないだろうか。文化に高低はないが、新市街を歩いても何かひとつ落ち着かないのは私だけではないと思う。確かにそこにはモダンなお店が立ち並び華やかな気分にさせてくれるのだが、そういう気分というのは長続きするものではない。底の浅い、薄っぺらなものを感じ、厭世的になってしまう。意識の問題であるから、人によって感じ方は違うのだろうけど圧倒的に多くの観光客が旧市街に集中することを思えば、あながち私独自の想いではないようだ。スペインの元となったCASTILLA王国は、戦乱の中を生き抜いてきた歴史があるだけに首都を一箇所に置くということしなかった。常に臨戦態勢だったといえる。その影響もあってハプスブルグ、スペインになってからも幾度かの宮廷移動の変遷を見ることになる。トレド、バジャドリッド、グラナダ、サラゴサなどで、王侯貴族は度々移り住んだのだが、新大陸発見以来の富の流入にあいまって宮廷自体の規模も巨大化してしまう。その結果、そう度々引越しも出来なくなってしまう。何せ時代が違うのだ。松本引越しセンターはなかったのだ。それでイベリア半島のど真ん中、つまり交通の要所であり、水が豊富で緑が多く王侯趣味の狩場が広がるマドリッドに1561年首府が制定された。時の王様フェリッペ二世の夢といわれたエスコリアル離宮、修道院、王廟(三つの機能を持っている)建設をまじかに見たかったこともある。むしろ寒村といえたマドリッドの急発展はこれより始まることになる。ちなみに文献によると首都制定前のマドリッドの人口は二万人足らずだったという。そして1570年には35000,16世紀の終わりには65000になっていた。大変な急成長だったといえる。

映像からはなかなか伝わらないものがある。F-1レースのスピード感、エンジンオイルの焼ける臭いはテレビでは伝わらない。サッカーの試合での喧騒もそうだ。それと同じように旧市街地が持つ重厚な歴史も実際に歩かないと、感じ取れるものではない。確かに人間が持つ感覚の中で視覚が最も大切かもしれん。しかしそれだけじゃない。多くの先人たちが通り過ぎた街路。そこには結婚式が、葬式が、お祭りの行列が、幾多の喧騒があったはずだ。王侯貴族が通った。僧侶も通った。芸術家も、文学者も、酔っ払いも。娼婦も、オカマも、レズも、絶世の美女も、普通のオバンも皆通り過ぎた。彼ら、特異な人々の特異な、あるいは一般庶民の雰囲気が何百年に亘って街路に浸み込んでいるのだ。これこそ街のアイデンティティーなのだ。今のマドリッドの旧市街はハプスブルゲ家時代のものだ。カルロス5世が生まれるのが1500年、そして最後のスペイン、ハプスブルグ家のカルロス2世がなくなるのが1700年。実に覚えやすい。この期間を西洋史区分において中世と呼べるのかどうか疑問だが、中世後期と捉える人もいるようだし、近世あるいは近代と決めてしまうとロマンが薄れるような感があるので、この項は中世で通すことにする。Castizoと呼ばれる生粋のマドリッド人が多く住む旧市街地を散策してみようと思う。なおこの散策を実際に企画商品にしたのがある。実に斬新なアイデアであり、ガイドと一緒だと知らなかった世界が多く見れるものだ。しかも料金が安いのでお勧めだ。詳しくはwww.myushop.netのスペインをプットしてマドリッド旧市街探索で。


