
マドリッド旧市街の中心はなんと言ってもマジョール広場だ。大道芸人、似顔絵描きがたむろするお祭り広場といえる。また実際、市主催の際事ごと開かれたし、今でも開かれている。日曜ごとの切手、古銭市や不定期だが物産市、コンサート、平和デモ、政党集会など多目的お祭り広場といえる。ベニスのサン、マルコス広場を彷彿させる、もっとも旅情を感じさせるところではないだろうか。
1580年、首都をマドリッドに移したフェリッペ二世はこの広場の建設を命じるのだが、遅々として工事は進まず、一応の完成を見たのは次の代のフェリッペ三世の1619年。しかし三度の大火事に会う。特に790年の火事はひどく、建物の三分の一が消失。1854年になって修復工事が終わっている。その昔は闘牛、異端野外裁判(この模様はfrancisco ricciの作品でプラド美術館にある)絞首刑などが開催された。絞首刑が開催されたというとおかしな言い方だが、実際、市民の楽しみだったという。事の善し悪しは別として歴史の舞台となった広場というのは間違いない。またこの一帯はmesonと呼ばれる実に雰囲気のよい、また歴史の厚みを自然と感じさせる飲み屋さんの多いところだ。マドリッドの中でも最も魅力的な場所である。この一帯の虜になった人がいる。ヘミングウェイだ。自分の作品の中にも度々登場する。アメリカ人は自国の歴史が浅いだけに逆に大事にする。(多分、学校でそういう風に教育されているのだろう)やたらとこの一帯はアメリカ人が多い。
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カバ、バハ(cava baja)通り、ハプスブルゲ家のマドリッド市街地でも、最も時代を感じ取れる通りではないだろうか。文化に高低はないが、新市街を歩いても何かひとつ落ち着かないのは私だけではないと思う。確かにそこにはモダンなお店が立ち並び華やかな気分にさせてくれるのだが、そういう気分というのは長続きするものではない。底の浅い、薄っぺらなものを感じ、厭世的になってしまう。意識の問題であるから、人によって感じ方は違うのだろうけど圧倒的に多くの観光客が旧市街に集中することを思えば、あながち私独自の想いではないようだ。スペインの元となったCASTILLA王国は、戦乱の中を生き抜いてきた歴史があるだけに首都を一箇所に置くということしなかった。常に臨戦態勢だったといえる。その影響もあってハプスブルグ、スペインになってからも幾度かの宮廷移動の変遷を見ることになる。トレド、バジャドリッド、グラナダ、サラゴサなどで、王侯貴族は度々移り住んだのだが、新大陸発見以来の富の流入にあいまって宮廷自体の規模も巨大化してしまう。その結果、そう度々引越しも出来なくなってしまう。何せ時代が違うのだ。松本引越しセンターはなかったのだ。それでイベリア半島のど真ん中、つまり交通の要所であり、水が豊富で緑が多く王侯趣味の狩場が広がるマドリッドに1561年首府が制定された。時の王様フェリッペ二世の夢といわれたエスコリアル離宮、修道院、王廟(三つの機能を持っている)建設をまじかに見たかったこともある。むしろ寒村といえたマドリッドの急発展はこれより始まることになる。ちなみに文献によると首都制定前のマドリッドの人口は二万人足らずだったという。そして1570年には35000,16世紀の終わりには65000になっていた。大変な急成長だったといえる。

映像からはなかなか伝わらないものがある。F-1レースのスピード感、エンジンオイルの焼ける臭いはテレビでは伝わらない。サッカーの試合での喧騒もそうだ。それと同じように旧市街地が持つ重厚な歴史も実際に歩かないと、感じ取れるものではない。確かに人間が持つ感覚の中で視覚が最も大切かもしれん。しかしそれだけじゃない。多くの先人たちが通り過ぎた街路。そこには結婚式が、葬式が、お祭りの行列が、幾多の喧騒があったはずだ。王侯貴族が通った。僧侶も通った。芸術家も、文学者も、酔っ払いも。娼婦も、オカマも、レズも、絶世の美女も、普通のオバンも皆通り過ぎた。彼ら、特異な人々の特異な、あるいは一般庶民の雰囲気が何百年に亘って街路に浸み込んでいるのだ。これこそ街のアイデンティティーなのだ。今のマドリッドの旧市街はハプスブルゲ家時代のものだ。カルロス5世が生まれるのが1500年、そして最後のスペイン、ハプスブルグ家のカルロス2世がなくなるのが1700年。実に覚えやすい。この期間を西洋史区分において中世と呼べるのかどうか疑問だが、中世後期と捉える人もいるようだし、近世あるいは近代と決めてしまうとロマンが薄れるような感があるので、この項は中世で通すことにする。Castizoと呼ばれる生粋のマドリッド人が多く住む旧市街地を散策してみようと思う。なおこの散策を実際に企画商品にしたのがある。実に斬新なアイデアであり、ガイドと一緒だと知らなかった世界が多く見れるものだ。しかも料金が安いのでお勧めだ。詳しくはwww.myushop.netのスペインをプットしてマドリッド旧市街探索で。


